経緯
「くにたちアートビエンナーレ」は、全国野外彫刻コンペティションを主軸に2015年、2018年の2回開催し、入選作品16点が大学通りとさくら通りの緑地帯に設置されました。
第1回では156日間の会期を設け、会期中、国立在住の作曲家委嘱作品「祝祭」初演や、市民実行委員会の企画による展示、ワークショップ、映像展、アートプロジェクトなど多岐に亘るイベント19件を実施しました。
しかし、事務局と市民実行委員会による運営では、ビエンナーレとしての総合的なオーガナイズは難しく、コンペとイベントが別々に進行する中、作品だけが公共の場所に恒久設置されることへの疑問が寄せられました。
第2回では、野外彫刻コンペティションと市民参加型アートイベント4件に絞って実施、なかでも市民が主役のアートプロジェクトPlay Me, I’m Yoursは日本初開催となり、市内外の延べ60000人を動員することとなりました。
アンケートとクロスチャット
これを契機に2018年秋、野外彫刻展についてのアンケートを実施した他、誰でも参加できるクロスチャット(意見交換会)を複数回開催しました。行政、商業、観光、美術関係、作家、アート愛好家など様々な立場から率直な意見交換がなされ、ビエンナーレ=野外彫刻作品コンペという図式への疑問が提示されました。
そして、ビエンナーレは期間を決めた一時的なイベントではなく、地域と一緒に社会に関与する仕組みをつくり、アートに親しめる拠点や人を育てていく視点をもった事業であるべきであり、そこに市民が一緒に議論し参画する機会があることが望ましいという意見が多くを占めました。
文化芸術推進基本計画
さらに、「文化芸術基本法」の施行に基づき、2019年に国立市では「国立市文化芸術推進基本計画」が策定されましたが、文化施設の役割も地域社会の課題に対応した地域貢献や、人々の参加の機会を開く社会的包摂の機能を発揮することが求められるようになりました。
文化施設を担う当財団のビエンナーレ事業もその責務を負い、地域の拠点として未来を見据えた地域課題への貢献や、社会参加を開く継続的な事業を地域と創る方向へと転換が迫られています。
新しい枠組み
このような状況の中、2年をかけて検討を重ねた結果、ビエンナーレとして彫刻作品を公募し、コンペを開催、賞金を授与して彫刻作品を街に設置していくという枠組みの継続は困難であると考え、新たな枠組みでスキームを作るため、くにたちアートビエンナーレは一旦中止することを決定いたしました。
現在、市内外の様々な主体が連携、協働し、アーツカウンシル東京の協力を得て、調査や仕組みづくりを行っています。
新しい事業の情報について、新ウェブサイトが立ち上がるまでは当面くにたち芸術小ホールのウェブサイトから発信していきます。
なお、2015年から設置された彫刻作品は、今後も自然のギャラリーで四季折々の色彩を背景にその姿を映し、市民の皆様に親しまれるだけでなく、作家の個展やワークショップなどの事業を継続して行っていく予定です。
彫刻コンペとしては本事業を終了することで作家の皆様の期待に沿えず誠に恐縮に存じますが、文化芸術の薫るまちを標榜するくにたちのアート事業の展開にぜひ注目していただきたく、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。