学校の音楽の時間、シューベルトとヴェルナーの《野ばら》の聴き比べをしませんでしたか?
《野ばら》のように、詩から音楽が生まれて一つの歌になったものを、歌曲と呼んでいます。シューベルトやヴェルナーだけでなく、実はベートーヴェンやブラームスも《野ばら》を作曲していますが、これらはもともと、ゲーテが書いた詩から始まっているのです。文豪ゲーテはたくさんの詩を書きましたが、多くの作曲家がそれに音楽を付けて、色とりどりの美しい歌が生まれてきました。
本公演ではゲーテと歌曲にスポットを当てて、前半はゲーテの詩にシューベルトやリスト、チャイコフスキーが作曲した有名な歌を集め、ドイツの文豪×著名な作曲家による歌曲の森へと足を踏み入れます。後半は、ゲーテの有名な詩がいくつも織り込まれている名作『ヴィルヘルム・マイスター』の物語へ。小説の中で詩が紡がれてゆく、印象的な場面を日本語で朗読しながら、シューマンが付した歌曲に色彩豊かな挿絵を加えて、本格的な歌曲の世界へとご案内します。
強い音楽が五感に訴えかける一夜限りの公演
「ゲーテは稀有な観察眼を持ち、人間らしさを愛して、生涯それを追求した人だと思います。この物語の中で少女ミニョンと竪琴弾きの老人が物語の中で歌う詩にも人間の複雑な感情が巧みに描かれていて、当時から現在に至るまで、多くの作曲家にインスピレーションを与えてきました。その中でもシューマンが付したのは、私たちの五感すべてに訴えかけるような、強い感情に満ちた音楽です。本公演では原作の詩の場面を日本語で朗読しつつ、物語の挿絵を投影しながら、ゲーテ×シューマンの歌曲の世界を立体的に描いていきます。
ドイツ歌曲を、その原作のそれぞれの場面まで掘り下げて、日本語の朗読や挿絵と共に堪能できる機会はそうありません。一度限りの公演を、ぜひくにたち市民芸術小ホールならではの豊かな響きの中でお愉しみいただければと思います。」(筒井紀貴さん)
ひとつの物語として楽しんで
「シューマンの描く《ミニョン》の歌は、憧れや、憂いを帯びた儚さを持った曲です。そして、それだけでなく、その中に渦巻く彼女の感情の激しさが見事に表されていて、親近感を持って聴いていただける作品です。ゲーテや歌曲と言うと、一見とっつきにくい印象もあるかもしれませんが、挿絵や朗読と組み合わさることで、より分かりやすく、ひとつの物語としてお楽しみいただけると思います。」(金持亜実さん)
孤独の内に秘めた思い
「竪琴弾きの詩にはシューベルトやヴォルフも作曲していて、若い主人公ヴィルヘルムに深い示唆を与えるこの老人の、孤独や諦念の表現が印象的です。しかしシューマンの音楽では、それでもなお生きることへの執着が感じられ、つらい世の中に反発して立ち向かおうとする意志の強さが巧みに表現されているのは聴きどころの一つです。」(寺島弘城さん)
公演情報
日程 | 2023年1月21日(土) |
時間 | 15:00(開場14:30) |
チケット発売 | 10月11日(火) |
会場 | 全席指定 ホール |
料金 | 一般:2,000円 学生:1,000円 未就学児入場不可 |
出演 | 筒井紀貴(演出・Pf.) 金持亜実(Sop.) 岡うらら(Sop.) 寺島弘城(Ten.) 関口直仁(朗読) 水本紗恵子(挿絵) |
曲目 | シューベルト《野ばら》D.257 シューベルト《ガニュメート》D.544 シューベルト《糸を紡ぐグレートヒェン》D.118 シューマン《君を想う》op.78/3 ブラームス《現象》op.61/3 チャイコフスキー《ただ憧れを知る者だけが》op.6/6 リスト《ミニョンの歌》S.275 シューマン 《「ヴィルヘルム・マイスター」からのリートと歌》op.98a (詩と物語の朗読、挿絵のスクリーン投影を交えた演出 |
チケット 取扱 | 芸術小ホール 白十字国立南口店 旧国立駅舎まち案内所 カンフェティ |