くにたちデビューコンサートvol.14
坂本光太ソロリサイタル チューバで聞く音楽の4世紀
今回は「チューバで聞く音楽の4世紀」と題して、チューバという楽器で、18世紀から21世紀、つまり古典派、ロマン派、いわゆる現代音楽、そして2021年の現在に至る、音楽のあり方の移り変わりを見てみよう、ということで4つの曲をお届けします。
1曲目、ベートーヴェン「ホルン・ソナタ」は、18世紀最後の年、1800年に作曲された3楽章の楽曲で、古典派の音楽に分類できます。本来はナチュラル・ホルンという、楽器のために作曲されたもので、これはバルブのついていない、言うなれば先の広がったただの金属のパイプで、非常にシンプルな楽器です。このごく単純な楽器のために、ベートーベンは非常に高度なテクニックを求めました。力強さとしなやかさが美しい楽曲です。
2曲目、19世紀のロマンはの音楽は、クララ・ヴィーク・シューマンによるものです。彼女は各国を演奏旅行するような天才ピアニストで、同時に作曲家でもありました。しかしある時、作曲の筆を折って、ピアニストとしての家業に専念します。これには、当時女性であるというだけで作曲家として正当に評価されることはなかったという理由もあるでしょう。今回演奏するのは、彼女の作曲家としての最後の時期に書かれた、ヴァイオリンとピアノのための「三つのロマンス」で、夢見るような、なやましくも美しい作品です。
3曲目は、20世紀の音楽、ジェニファー・グラスによる、チューバとピアノのための「ソナティナ」です。チューバのソロレパートリーの歴史は非常に浅く、せいぜい戦後1950年代くらいからといっていいでしょう。そのなかで、この楽曲はチューバのオリジナルレパートリーとしてはかなり早い時期に作曲されたものの一つで、硬いサウンド感、目まぐるしく変わる拍子、そしてどこか皮肉っぽくてユーモラスで、なんだか楽しい4楽章をお楽しみ下さい。
4曲目は2021年に作曲された新作です!久保田翠さんに委嘱しました。久保田さんはアメリカ実験音楽の研究者で、記譜と身体性を、個人的には音楽と演奏行為と言い換えてもよいかと思うのですが、これをテーマに活動している作曲家です。チューバの演奏と、チューバ演奏についての自己言及的なマルチタスクの新曲になると聞いています。みなさんびっくりするような作品になると思います。どうか楽しみにしていて下さい!
みなさまと会場でお会いできることを楽しみにしています!