古民家のまわりで曼珠沙華を見つけました。この花は、土地によって1,000もの異名があるそうですが、シビトバナ、ステゴバナなどという、『大和本草』(貝原益軒 1709年)に現れる名前からは、有毒性とともに不吉なイメージがあるのも頷けます。

曼珠沙華あれば必ず鞭打たれ  高浜虚子

しかし、歌人の齋藤茂吉は、随筆の中で「勿体ぶりの完成でなくて、不得要領のうちに強い色を映出しているのは、寧ろ異国的であると謂うことも出来る。秋の彼岸に近づくと、日の光が地に沁み込むように寂しずかになって来る。この花はそのころに一番美しい。彼岸花という名のあるのはそのためである。」(『齋藤茂吉全集 第6巻』岩波書店 1974年)と称賛しています。
群生の妖艶も、数本の寂然も、見る人の心に残る花であることには間違いないのではないでしょうか。