蒼穹を大海に見立て、鯉のぼりが泳ぐ様は、粋な江戸っ子が考えついたそうです。しかしこれは思い付きではなく、中国の故事に倣っています。
 中国の黄河上流に竜門という激流が連なる滝があり、ある時、一匹の鯉が激しい滝水に逆らいながら竜門を登りきったところ、鯉は龍へと変身し天に昇っていきました。この「登竜門」 という故事が、立身出世の関門を示す意味の語源ともなっています。
 魔除けの意味が込められた吹き流しは五色で出来ていますが、その五色もまた、中国の陰陽五行説に由来します。万物は「陰・陽」の二気、「木・火・土・金・水」の五行で成り立ち、これら陰陽五行の要素で世の中は回っているという思想で、日本の文化に深く関わっています。それにしても、この川柳ほど江戸っ子を表したものはないようですね。

  江戸っ子は皐月の鯉の吹き流し口先ばかりではらわたはなし