伝承庭園の小さな梅の木に近寄れば、梅花の馥郁とした香りがありました。
梅見月がきたのですね。
 梅、とくれば、やはり菅原道真公で知られる飛び梅を思い起こします。菅公ゆかりの天神さまは全国に1万2000社以上あるそうですが、谷保天満宮もその一つです。江東区の亀戸天神や文京区の湯島天神などと同じく、梅林の美しさに心和むものがあり、“名所”となっています。
 
江戸時代、亀戸天神の近くに、「亀戸梅屋舗」という名所がありました。現在はその痕跡もありませんが、歌川広重の『名所江戸百景』に「亀戸梅屋舗」の図があるので偲ぶことができます。広重が描いたこの梅は、「臥龍梅」というのだそうで、ゴッホがこの図を油絵で模写したことでも知られていますから、どこかでご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 万葉集に詠われた梅は、古今和歌集の時代に、桜にその名声を譲りましたが、今も私たちの暮らしを豊かに彩ってくれています。

歌川広重『名所江戸百景』から「亀戸梅屋舗」

郷土文化館伝承庭園の梅