郷土文化館では、市役所から移管された写真の整理を進めています。このうち、昭和30年頃から昭和45年頃までの、およそ25,000コマのネガフィルムのデジタル化に着手しました。写真は、当時の町役場(市役所)広報係の職員が、広報紙に載せるために撮ったものが多数です。しかし、その目的を超えて、時間の経過は、一コマ一コマから貴重な情報を私たちに投げかけてくれます。例えば、国立駅前の写真の背景に映りこんだ風景は、すっかり変貌したものの、当時のまちの息吹すら感じさせてくれますし、人々の気持ちすら伝えてくれる、といったら考えすぎでしょうか。古写真を見て懐かしむと同時に、時代を読み解くキーが、堆積していることにも気づきたいと思います。
写真家、土門拳の一書にある次のようなフレーズは、今も貴重な箴言だと思うのですが。
「今はカメラを記録する手段から一歩をすすめて、認識する手段に高める必要がある。それもただ平面的に認識する手段としてではなく、われわれの認識そのものを変革する手段にまで高める必要がある。物を撮っても、事柄を踏まえなければならないというのも、つまりはそれへの手引きにすぎない。」(土門拳『写真作法』より)
紹介した紹介する写真は、時節柄、胸に響くものがあるのではないでしょうか。