郷土文化館の武蔵野庭園のススキが、朝露に輝いていました。

  我が宿の尾花が上の白露を消たずて玉に貫くものにもが (1572)

 大伴家持が歌ったようなロマンティシズムはありませんが、風になびくススキを見ていると、茫乎とした草原に立ちたい思いには駆られます。ススキが原といった名所が、各地で喧伝されるのも、宜なるかなです。郷土文化館の庭園のススキは、それほど多くはないのですが、午後の陽光を受けて穂先が光る様は、それなりに良い気分にさせてくれますから、“小さな秋”を楽しむにはうってつけです。お散歩かたがたぜひお越しください。
 万葉集には、先に引いた家持のほかにも、数多くのススキの歌があります。ススキと言えば秋の七草。とりわけ人口に膾炙しているひとつが、山上憶良の旋頭歌でしょうか。

  萩の花 尾花葛花 なでしこの花 をみなへし また藤袴 朝顔の花 (1538)

 この歌のアサガオは、今の桔梗のことだそうです。その自生の桔梗が、絶滅危惧種に登録されているとは知りませんでした。秋の七草が忘れられるとは思いませんが、山野草には過酷な時代なのですね。