人々が集い、また住まう“まち”。そこには人々の日々の営みが重層的に積み重なり、あるものは記憶され、またあるものは思い出へと転換され、ひと握りの事象が記録として残されていく。人々のこうした営為の堆積が、その“まち”の歴史を築いているのだろう。そんな想いを抱かせる1冊をご紹介します。
 本書は、国立のまち歴史物語研究会および国立駅前大学通り商店会により、シリーズ刊行の第1回「景観編」として発行されたもの。景観を客観的に物質的側面のみから論ずるのでなく、「国立へようこそ」と題した後書にあるように、「国立の取り組みの歴史を人物中心の物語り風に取りまとめ」た内容となっています。今昔を通じて、まちづくりに関わった、あるいは関わっている人々のトピックスが随所に散りばめられています。
 本書では大学通りを中心に、国立大学町と称された地域について、その歴史に関わる9つの物語を紹介しています。いずれも平易な文章、端的な説明で読み易く、加えて写真や図版等を豊富に掲載してビジュアル面でもキャッチーな紙面に仕立てられています。歴史という堅苦しくなりがちなテーマを、分かり易く気軽に読み進められるよう配慮されています。
 「先人が培ってきたこうした都市景観を貴重な財産として継承し、保全しながら、さらにより魅力的なものへと発展させることは、現代に生きる人々の喜びであり、使命でもある。」という国立市都市景観形成条例前文の言を実践するための手引きとしても、一読しておきたい1冊。【Ryou】